本学 名誉教授の池内 克史 先生が令和4年秋の瑞宝中綬章を受章されました。池内先生は1978年に本学大学院の博士課程を修了後、Massachusetts Institute of Technology(MIT)、Carnegie Mellon University(CMU)などを経て1996年に本所に赴任されました。
池内先生の研究分野は、カメラ画像を通して計算機に外界を認識・理解させるコンピュータビジョンと呼ばれる分野です。MITやCMU在籍時には、画像の明るさ解析などの基礎的理論を深く研究されました。特に明るさ解析問題における不定性を、「ある点は周りの点と同じような傾きを持つ」という拘束(「Smoothness Constraint」)を用いて解く手法を世界で初めて導入したことで、広く知られています。
本学では、これらの研究を発展させて、文化財をコンピュータ技術によって保存・利活用・解析するe-Heritageと呼ばれる文理融合の研究分野を創出されました。文化財の3次元形状や色彩情報を取得する技術を系統的に開発し、得られたデータを解析することによって考古学や民族学における新たな知見が得られることも示されました。またこれらの成果として奈良大仏や鎌倉大仏、九州装飾古墳、カンボジアのアンコール遺跡群などのデジタルコンテンツ化に成功し、様々なメディアや教科書などでも取り上げられています。人材育成面においてもCMUと本学を通じて、博士だけでも50名以上の人材を輩出されました。またIEEE-PAMI Distinguished Researcher Award(2011年)、紫綬褒章(2012年)、大川賞(2014年)、情報処理学会功績賞(2015年)、FIT船井業績賞(2017年)、電子情報通信学会功績賞(2021年)など多くの賞を受賞されています。
本学を定年退職された後は、Microsoft Research Asia (MSRA)の主席研究員として入社、北京に駐在され、現在は同社レドモンド本社の研究開発本部で上級主席研究マネージャとしてロボットの社会応用に関する研究開発を続けておられます。
このたびの池内先生の受章を心よりお慶び申し上げるとともに、ご健康と今後益々のご活躍をお祈り申し上げます。
(情報・エレクトロニクス系部門 准教授 大石 岳史)
池内克史名誉教授のコメント
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