国立研究開発法人防災科学技術研究所(理事長: 寶 馨) は、愛知県豊橋市(市長:浅井 由崇)、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学(総長:杉山 直)、国立大学法人東京大学(総長:藤井 輝夫)、不二サッシ株式会社(代表取締役社長:江崎 裕之)および文化シヤッター株式会社(代表取締役社長:小倉 博之)と共同研究に関する契約を締結し、将来の地震に備え、建物の構造と設備機器などを含めた建物全体の機能を維持することを目的として、愛知県豊橋市立磯辺小学校に協力を得て「実建物を対象とする瞬時損傷判定技術の実証実験」を開始いたします。
1.実験目的
将来の地震に備え、建物の構造だけではなく、非構造部材(外装、間仕切り壁、天井など)や設備機器などを含めた建物全体の機能を維持することは、日常生活や経済活動を続ける上で非常に重要です。そのため、地震が起きた直後に、建物が受けた損傷の度合いを瞬時に把握し、建物の安全な使用の可否を速やかに判断することが不可欠です。
損傷の把握や安全使用の判断技術の研究開発の一環として、防災科学技術研究所は実大三次元震動破壊実験施設「E-ディフェンス」において、住居の室内を模した試験体(実験モデル)の非構造部材や室内の家具等の地震時の損傷データを収集するための『室内空間を中心とした機能維持に関する振動台実験』を2021年に、大地震後の速やかな建物の状況判断と継続利用の可否を判断する技術を開発するための『10層鉄骨造オフィス試験体による建物の動的特性評価実験』を2023年に実施しました。
これらの実験では、(1)画像解析技術を活用して地震後の建物や都市の損傷状況を画像データから把握し、被害を判定する「被害把握技術」と(2)建物に内蔵したセンサとLEDライトで損傷を検知し度合いを知らせる「LED光センサアラートシステム」の検証を行いました。
今回の実験では、これら2つの技術の研究開発をさらに進めるため、実際の建物の地震被害実測データに基づいて評価することを目指しています。実験対象の建物は災害時に避難所となる小学校です。この実証実験を一定期間実施することにより、被害把握技術とLED光センサアラートシステムの実用性を確認します。
また、実験を自治体と協力して運用することにより、社会のニーズに合ったシステムとなるよう開発を進めていきます。
2.実験内容
① LED光センサアラートシステムの実証と建物モニタリング
「10層鉄骨造オフィス試験体による建物の動的特性評価実験」において、外装材にLED光センサアラートシステムを設置しました。この実験により、地震後の建物の損傷の状況を可視化するシステムの有効性が確認されました。次の段階として、愛知県豊橋市立磯辺小学校の外壁の一部にセンサとLEDを内蔵したカーテンウォール部材を施工することにより、実際の建物でのLED光センサアラートシステムの検証を行います。さらに、建物内部の構造部材(床)とその他非構造部材(天井・配管等)にもセンサを設置し、地震時の建物の動きを詳細にモニタリングします。これにより、LED光センサアラートシステムによる観測結果と、建物の実際の挙動の相関を詳しく検証します。
② 画像解析技術を活用した都市空間の被害把握技術のデータ収集
本研究では、校舎の屋上に市中カメラを設置しました。地震による被害状況を最も正確に判断するため、視覚情報に注目し、都市全体の被害状況を把握する被害把握技術を開発しています。この技術では、市中カメラにより撮影された動画データを収集し、画像解析技術を用いて災害時以外の通常時の都市の変化を継続的に捉えます。それらを発災直前の状況とし、発災後の状況と比較することで、最新の状況に基づいて被害判定を行うことができ、より正確な災害対応に役立てることが可能になります。
③ LED光センサアラートシステムの地震災害初動対応への活用
学校の校舎などについて、地震発生直後の初動期に避難所として開放するかどうかを判断するために必要な被害状況を、速やかに・確実に把握することが難しい場合があります。被害把握技術とLED光センサアラートシステムは、地震の規模や建物の揺れ具合・被害の度合いを瞬時に可視化することにより、校舎などの避難所としての使用の可否判断をサポートする情報を防災担当者に提供します。また、この実証実験を通じて、防災担当者や避難所の利用者に伝えるべき情報、システムの運用方法、避難所の開設など初動対応を円滑に進めるためのマニュアル「ファーストミッションボックス(FMB)」への反映について、協議・検討を進めます。
3.実験実施期間
2024年10月12日~2027年3月末(予定)
【本件に関するお問い合わせ先】
国立研究開発法人防災科学技術研究所
都市空間耐災工学研究領域 兵庫耐震学研究センター 木下
Tel:0794-85-8211
E-mail:e-def (末尾に"@bosai.go.jp"をつけてください)
不二サッシ株式会社 技術本部 管理部 磯本
Tel:03-6867-0820
E-mail:kouhou(末尾に"@fujisash.net"をつけてください)