○ポイント:
◆医療・介護・健診に関するビッグデータの統合解析による歯科医療施策の立案を支援
◆エビデンスに基づき住民の安心・安全の確保に資する成人・高齢者のビッグデータを活用したオーラルフレイル対策推進事業の取組みによる受診率2割向上
一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構(所長:遠藤久夫、以下、医療経済研究機構)研究部の満武 巨裕 担当部長の研究グループと国立大学法人 東京大学 生産技術研究所(所長:年吉 洋、以下、生産技術研究所)の合田 和生 教授の研究グループは、岐阜県国民健康保険団体連合会(理事長:水野 光二、以下、岐阜県国保連)と地域における医療・介護・健診に関するビッグデータを活用し、公益社団法人 岐阜県歯科医師会(会長:阿部 義和、以下、岐阜県歯科医師会)が行うオーラルフレイル対策推進事業のための分析支援を実施しました。
地域における医療・介護・健診に関する個々の施策は、国民健康保険、後期高齢者医療広域連合、介護保険広域連合、県庁をはじめとする複数の異なる制度や組織がそれぞれ担っていることから、従来、自治体において医療・介護・健診を一体的に捉えて分析し、施策の立案に活かす試みは十分には行われておりませんでした。医療経済研究機構と東京大学は、これまで地域における医療・介護・健診のビッグデータを活用する一体的な施策立案の実現を目指す研究を進め、歯科を含めた医療ビッグデータを統合して解析可能な超高速ヘルスケアビックデータ解析システムを開発し、地域における医療・介護・健診のビッグデータを活用する一体的な施策立案の実現を目指す研究を進めてきました。この度の取組みは、内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期「統合型ヘルスケアシステムの構築」(プログラムディレクター:永井良三(自治医科大学 学長))のもとで、当該研究を発展させると共に、岐阜県歯科医師会および岐阜県国保連の協力を得ることにより、地域後期高齢者を対象としたにおける歯科口腔保健推進と健康寿命の延伸を含めた効率的なオーラルフレイル施策立案を目指すものであり、我が国で初めての試みです。
岐阜県歯科医師会および岐阜県国保連は、解析システムから大半の岐阜県民が県内歯科医院で治療を受けているエビデンスを作成し、令和6年4月から県内歯科医院ならどこでも歯科口腔健診を受けられるオーラルフレイル健診を開始し、前年月比で受診率が約2割向上しました。今後も解析システムを利用して、オーラルフレイル健診の効果分析を進めていきます。
○永井良三プログラムディレクターのコメント:
本研究開発は、医療デジタルツインの実装により医療・ヘルスケアにおける「知識発見」と「医療提供」の循環が自律的に促進され、医療の質向上、健康寿命延伸、医療産業振興、持続可能な医療制度に活用されることを目指します。医療経済研究機構と東京大学の研究グループは、岐阜県下の全自治体との協力関係の下、ヘルスケア超ビッグデータを高速処理するシステムを駆使し、地域における通院実態や特定疾患の経時的変化の解明を進める等、先駆的な研究成果を次々と達成してきました。この度、岐阜県歯科医師会および岐阜県国保連の協力を得て新たに着手した研究開発の取組みでは、これまでに培ってきたビッグデータ分析に関する研究成果を昇華し、実際の地域歯科医療の施策立案に繋げたものであり、引き続き協力関係を維持し、更なる貢献を期待しています。
○研究の背景:
医療経済研究機構と東京大学は、これまで歯科を含めた医療ビッグデータを統合して解析可能な超高速ヘルスケアビックデータ解析システムの開発に成功し、地域における医療・介護・健診のビッグデータを活用する一体的な施策立案の実現を目指す研究を進めて参りました。この度は、その一環として、内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期「統合型ヘルスケアシステムの構築」のもとで、地域における医療・介護・健診のビッグデータを活用する一体的な施策立案の実現を目指す研究を進めてきており、昨年度には、歯科を含む医療レセプトデータを統合して、超高速レセプト等ビッグデータ解析システムの開発に成功しています。
○研究の内容:
医療経済研究機構と東京大学は、この度に着手した研究開発に於いて、超高速レセプト等ビッグデータ解析システムをさらに発展させるとともに、岐阜県歯科医師会および岐阜県国保連の協力を得ることにより、地域後期高齢者を対象とした歯科口腔保健推進と健康寿命の延伸を含めた効率的なオーラルフレイル施策立案の支援をしたものであり、我が国で初めての試みです。今後もデジタル化された歯科データに医療・介護を含めたデータを用いて啓発するなどの取り組みを通じて、口腔から始めるフレイル予防を推進するための活動を支援します。
今回、岐阜県歯科医師会および岐阜県国保連は、岐阜県内の歯科医院における歯科口腔健診受診の有無を検討する際に、県内の国民健康保険及び後期高齢者が歯肉・歯周疾患で受診している医療機関を分析したところ、経年的に大半の患者は県内で受診をしていることが明らかとなりました。
分析結果をもとに、令和6年4月から開始された「ぎふ・さわやか口腔健診」では、居住する市町村に関わらず、県内の歯科医院で受診できる広域対応が導入されました。これにより、費用決済業務の情報から、前年度と比較して受診率が約2割増加したことが確認されています。(4月〜8月計)。
9月以降も歯科口腔健診受診率は前年の同時期よりも増加しており、今後は歯科口腔健診と医療・介護レセプトデータも併せて活用することで医療・介護費用の適正化にも貢献でき、その成果は広く岐阜県民の健康寿命の延伸といったメリットにも繋がるものと思われます。
本研究成果は、岐阜県歯科医師会が主催する「後期高齢者歯科健診(ぎふ・さわやか口腔健診)結果のデジタル化を活用した歯科口腔保健推進フォーラム(令和6年10月3日)」に於いて報告したものです。今後、更に分析・研究を発展させることにより、地域における医療・介護・健診のビッグデータを活用する一体的な施策立案の実現を進めて参ります。
○問い合わせ先:
〈研究(医療経済学)に関すること〉
一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構
担当部長 満武 巨裕(ミツタケ ナオヒロ)
〒105-0001東京都港区虎ノ門1丁目21−19 東急虎ノ門ビル
Tel:03-3506-8529
Fax: 03-3506-8528
E-mail:mitsutake(末尾に"@ihep.jp"をつけてください)
〈研究(情報学)に関すること〉
国立大学法人 東京大学 生産技術研究所
教授 合田 和生(ゴウダ カズオ)
〒153-8505 東京都目黒区駒場四丁目6番1号
Tel:03-5452-6594
Fax: 03-5452-6577
〈オーラルフレイル対策推進事業に関すること〉
公益社団法人 岐阜県歯科医師会
〒500-8486 岐阜市加納城南通り1-18
Tel:058-274-6116
Fax:058-276-1722
〈報道担当〉
一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構
〒105-0001東京都港区虎ノ門1丁目21−19 東急虎ノ門ビル
Tel:03-3506-8529
Fax:03-3506-8528