12月5日(木)、第7回海底ケーブルの科学利用と関連技術に関する将来展望ワークショップ(https://seasat.iis.u-tokyo.ac.jp/CableWS/WS20241205/index.html)が、本所An棟コンベンションホールにて開催された。本ワークショップは、本所 海中観測実装工学研究センター主催にて、2018年から毎年1回開催されている。最初はハワイ大学から新たな観測システムとしてのSMART (The Science Monitoring And Reliable Telecommunications) Cableに関する基調講演1件(オンライン)、続いて日本から、光ファイバハイドロフォンを備えた先端センシングケーブルシステムによる海中音監視プログラム、国際ケーブル保護委員会(ICPC)のホットトピック、量子暗号通信の海底光ファイバ通信への応用、能登半島地震で起きた海底ケーブル故障への対応、完成間近な南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)、DONET等既存の観測データを用いた浜岡原子力発電所の津波監視システム、海底光ケーブルによる津波観測の今後の方向性、そして、海底掘削孔内光ファイバによる南海トラフ巨大地震発生帯のモニタリングシステムの紹介まで、バラエティに富んだホットな話題が8件提供され、参加者153名が活発な議論を行った。
冒頭のハワイ大学 Bruce Howe教授による基調講演「Observing the oceans and Earth with submarine cables with a look toward the future」では、海洋環境・地震・津波等の観測を目的とした海底ケーブル観測システムおよびセンサ技術を基に、広域で用いられる商用通信ケーブルにセンサを統合することで、数百万キロメートルにおよぶ海底ケーブルの電力と通信インフラを共有し、海底をベースとした地球規模の海洋・地球観測を、わずかなコスト増で可能とすることを目指すSMART Cableの将来展望について紹介された。
続く2講演では、日本における先端センシングケーブルシステムプログラム、ICPCで取り上げられる海底ケーブルに関するホットトピック紹介がなされ、本ワークショップ通じた国際的な連携と展開を予感させる活発な議論が行われた。
その後も多彩な話題が提供され、そのうち、KDDIケーブルシップ株式会社の藤原 空 係長による講演「令和6年能登半島地震と海底ケーブル故障」では、地震に起因するケーブル障害の特徴および障害のタイプと故障状況、障害箇所を特定するための技術と修理工事について具体的な事例を基に解説がなされ、日常生活において恩恵を預かっているが、日頃は目にすることのない海底ケーブルの敷設状況について思いをはせる機会となった。
ワークショップの締めくくり、協賛学会であるIEEE Oceanic Engineering Society(OES) Japan ChapterによるIEEE OES Japan Chapter Young Researcher Award 2024の受賞式を行った。本賞は、OESが開催する国際学会において、優秀な論文発表を行った若手研究者を表彰し、エールを送るものである。今年度は、海洋研究開発機構 出口 充康 副主任研究員が受賞された。氏のさらなるご活躍を期待したい。
ワークショップ後には、恒例の意見交換会で大いに盛り上がり、参加者からは、次回の開催を期待する声が多数寄せられている。乞うご期待。
(海中観測実装工学研究センター 特任研究員 杉松 治美)
左から、本所 川口 勝義 ワークショップ実行委員長・客員教授による開会挨拶、Howe教授による基調講演
左から、藤原係長による講演、IEEE OES Japan Chapter Young Researcher Award 2024受賞式
本学 地震研究所 篠原 雅尚 教授(OES Japan Chapter Chair)(左)と受賞者の出口副主任研究員(右)