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【記者発表】既存建築物のZEB化を支援する 無料シミュレーションツールを公開――建物のZEB化における経済性を"見える化"し、 カーボンニュートラルの実現を加速――

○発表のポイント:
◆建物所有者や管理者向けに、既存建築物のZEB化に必要な改修費用や省エネ効果を簡単に試算できるWebツールを開発し、無料で公開しました。
◆算出モデルは全国のZEB化事例を統計分析して開発されており、実態に即した推計が可能です。
◆本ツールの利用データを収集・分析することで、より精度の高い経済性評価手法の確立を目指します。

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試算結果例

○概要:
 東京大学 生産技術研究所 エネルギーシステムインテグレーション社会連携研究部門の岩船研究室は、SIP(注1)第3期「スマートエネルギーマネジメントシステムの構築」の研究開発テーマ「エリアエネルギーマネジメントシステムのプラットフォーム開発と実装」のうち個別テーマ「自治体向けローカルエネルギープラットフォームの構築」の一環として、建物所有者や管理者が既存建築物のZEB(注2)化を検討できるシミュレーションツール「簡易既存建築物ZEB化改修経済性分析ツール」(以下、「本ツール」という。)を開発し、無料で公開しました。

 本ツールは、建物の基本情報を入力するだけで(図1)、ZEB化に必要な改修費用や省エネ効果、投資回収年数などを自動で試算できます(図2)。本ツール開発の外注先であるZEB株式会社を通じて無料で一般公開され、全国の建物所有者や管理者の皆様にご利用いただけます。

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図1:入力画面
建物の地域(注3)、延床面積、階数などの基本情報を入力するだけで、ZEB化に必要な改修費用や省エネ効果、投資回収年数などが自動で試算されます。

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図2:計算結果例

○発表コメント:岩船 由美子 教授の「もしかする未来」
岩船先生.jpg2020年に政府が提示した、「2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロに」という高い目標は、国や地方公共団体、事業者、住民のすべてが協力・連携して対応していかなければ、とても達成できるような値ではありません。私たちは、民生部門での取り組みを加速させるために、より需要家に近い区市町村などの基礎自治体の役割も重要であると考えていますが、現状ではコミットメントが非常に低い状態です。
そこで、SIPの本テーマでは、自治体の現状把握、将来検討を支援するデータやツールからなるプラットフォームを開発し、地方自治体と最終消費者のラストワンマイルをつなぎ、最終消費者の行動やニーズを踏まえた、継続性・実効性のある温暖化対策を実現することを目指しています。その一環として、既存建築物のZEB化を促進するためのシミュレーションツールを開発しました。

○発表内容:
 カーボンニュートラル(注4)の実現に向けて、建築物の脱炭素化は重要な課題となっています。特に、既存建築物のZEB化は大きな省エネポテンシャルを有していますが、改修費用や投資回収の見通しが不透明なことが、取り組みを躊躇する要因となっています。
 本テーマでは、この課題を解決するため、建物所有者や管理者が容易に利用できる本ツールを開発しました。本ツールの特徴は以下の通りです:

1. 直感的なインターフェースにより、専門知識がなくても建物の地域、延床面積、階数などの基本情報を入力するだけで、概算改修費用や省エネ効果を試算できます。
2. 年間省エネ量、CO₂削減効果、投資回収年数など、多角的な分析結果を一括で提示し、意思決定に必要な情報を包括的に把握できます。
3. 全国のZEB化事例を統計分析して開発された算出モデルを採用しており、実態に即した推計が可能です。

 本ツールは下記のURLより、ZEB株式会社を通じて無料で一般公開され、全国の建物所有者や管理者の皆様にご利用いただけます。入力して頂いたデータは、既存建築物のZEB化における経済性評価手法の更なる精度向上のために収集させて頂き、建築物の脱炭素化促進に活用します。

○関連情報:ツール公開URL: https://www.zeb.co.jp/calcu/user_login

○研究開発事業:
本ツールの開発および提供は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期「スマートエネルギーマネジメントシステムの構築」JPJ012207(研究推進法人:JST)によって実施されました。

○用語解説:
(注1)SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)
 内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより、科学技術イノベーション実現のために創設した国家プロジェクトです。2023年度から開始した第3期では、Society 5.0の実現に向けてバックキャストで14の課題を設定し、技術だけでなく事業・人材等の5つの視点から検討を行うことで、社会実装に向けた戦略的な取組を進めています。

(注2)ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)
 年間の一次エネルギー消費量が正味でゼロまたは概ねゼロとなる建築物。BELS(建築物省エネルギー性能表示制度(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System))を通した認証において、基準一次エネルギー消費量(建築物の用途や規模、地域区分などに応じて定められる建物の一次エネルギー消費量の基準値)からの削減率に応じて以下の4段階に分類される。
 『ZEB』:省エネルギーと太陽光発電等による創エネルギーにより、年間の一次エネルギー消費量が基準値から100%以上削減されている建築物。
Nearly ZEB:省エネルギーと太陽光発電等による創エネルギーにより、年間の一次エネルギー消費量が基準値から75%以上100%未満削減されている建築物。
 ZEB Ready:省エネルギーにより、年間の一次エネルギー消費量が基準値から50%以上削減されている建築物(創エネルギーを除く)。
 ZEB Oriented:延床面積10,000㎡以上の建築物で、省エネルギーにより、年間の一次エネルギー消費量が基準値から40%以上(事務所等、学校等、工場等の場合は30%以上)削減されている建築物(創エネルギーを除く)。

(注3)地域の区分
 建築物省エネ法によりに本列島を気候特性に基づき8つの地域(1~8地域)に分類。1,2地域が寒冷地、3,4地域が準寒冷地、5~7地域が温暖地、8地域が亜熱帯となる。本ツールは現状5~7地域と8地域の一部のみ対象。

(注4)カーボンニュートラル
 温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質的な排出量をゼロにすること。

○問い合わせ先:
〈戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期「スマートエネルギーマネジメントシステムの構築」の研究開発テーマ「エリアエネルギーマネジメントシステムのプラットフォーム開発と実装」/個別テーマ「自治体向けローカルエネルギープラットフォームの構築」に関する問い合わせ先〉

東京大学 生産技術研究所 岩船研究室
教授 岩船 由美子(いわふね ゆみこ)
Tel:03-5452-6717 
E-mail:iwafune(末尾に"@iis.u-tokyo.ac.jp"をつけてください)

〈「簡易既存建築物ZEB化改修経済性分析ツール」に関する問い合わせ先〉
ZEB株式会社
担当 山口 卓勇(やまぐち たくお)
Tel:086-201-1894 
E-mail:takuo(末尾に"@zeb.co.jp"をつけてください)

〈報道に関する問い合わせ先〉
東京大学 生産技術研究所 広報室
Tel:03-5452-6738 
E-mail:pro(末尾に"@iis.u-tokyo.ac.jp"をつけてください)

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